株式会社ヒトボディ第六話〜俺たち(咬筋グループ)のせいで音が鳴ってる?顎関節に響く悲歌(エレジー)〜
- ファミリアくわな鍼灸院
- 5月1日
- 読了時間: 2分
「……また“クリック音”、出てますよ。朝から3件目っす」
顎関節課の主任、関戸(せきど)アツシが眉をしかめた。
口の開閉時に起こる、あの「カクッ」という音。
正式には“顎関節雑音”と呼ばれ、最近その報告が急増していた。

「原因、またウチっぽいです……」
表情筋課 咬筋グループのリーダー、噛田(かみた)シンが申し訳なさそうに頭を下げる。
「緊張続きで、咬合圧が高まってて。関節、押しちゃってるんだと思います」
—
咬筋グループは今や、無意識食いしばりの激務で昼夜を問わず稼働していた。
一方、顎関節課は繊細な動きと滑らかさを保つ専門部隊。
強い圧を長時間受ければ、構造にズレが生じるのも当然だった。
「俺らのせいで……関節、狂わせてるんだな」
噛田の声は、妙に静かだった。
—
後日、緊急の顔面支社 合同ミーティングが開かれた。
議題は「咬筋グループの過剰業務と顎関節トラブルの関係性について」。
—
「確かに咬筋さんたちの働きぶりはすごい。でも、そのせいで我々は**ズレる苦しみ**を背負ってる」
関戸主任の声が会議室に響く。
「音が鳴るたびに、住人(利用者)は不安になる。
“壊れたんじゃないか?”って。……あれ、俺たちの悲鳴なんです」
—
「……すまん」
絞り出すように謝る噛田に、表里課長が口を開く。
「これ、誰かのせいじゃないの。**働きすぎる筋肉と、それを支える関節の“バランスの崩れ”**が原因よ」
—
会議の最後に提案されたのは、新たな連携施策だった。
・咬筋グループの業務改善案
・夜間咬合の圧力分散に向けた【枕】導入実験
・ストレッチ訓練として、**“口あけヨガ”**を合同実施
・顎関節との動きの再連携

—
「音が鳴らなくなった日、“あの静けさ”が、いちばん嬉しかったっすね」
後日、そう話した関戸主任の頬には、どこかやわらかな表情が浮かんでいた。
—
その日、静かな口の開閉が復活した。
関節は鳴らず、咬筋も力まず、口元が少しだけ自由になった。
まるで、エレジーの終わりに訪れる——小さな希望の余韻のように。
今回のストーリーはいかがでしたか?
次回は咬筋グループから離れて顔面支社のお話です!
ほなまた!
Comentários